幻のラーメン。
「幻の○○」なんて宣伝文句はもう擦り切れちまって、煮込んでもアクしかでないような言葉だ。
私が出会った「幻」はどんな言葉でも言い表せないくらい、といいつつ回想するのであった。
あれは、そう、いつだったか。
たしか、雨が降っていた。いや、降ってなかったかもしれない。
そんなことどうでもよく、私は空腹だったのだ。
そこへつけてだ、雨などどうでもよいではないか、よいではないか、苦しゅうない、おぬしも、強情よのうつりかわりは激しきことミラーボールの如しってな感じで、脱線、事故には気をつけよう。
私はいつものラーメン屋の行列にならんだ。
つもりだった・・・
ようやっと、私は湯気の立ち込める店内のカウンターに腰を据えると「ラーメン大盛り」とだけ言うと、セルフサービスで給水器から水をどばどばと・・・おっと、コップをとるのを忘れていた。
いかんいかん、腹が減りすぎて、どうしても大盛りにしてしまう。
所詮、人間。腹が減りすぎては大盛りも憚らず、というではないか、今作ったけど。
ジャスティファイ。
ところでこの店、綺麗か汚いかでいうとどうも後者である。
マジックで書いてあるメニューの赤い装飾枠がもうくすんでしまっていて、油とかタバコのヤニで茶色くなった白地との境界がぼやっとしている。
店員の制服も前に洗ったのはいつなのか聞きたくなるぐらいだし、カウンターの木枠はべっ甲のような飴色だ。
けれど、味は抜群。
これぞ、「幻」かだって?
ぶっちゃけいうと「幻」というほどではないんだ。
じゃあ、なんなん?なんなんなん?
ちょっとまて、ちょっとまて、今運ばれて来たから、みんな静かに!
ふぅ、やっとこれで食欲という名の獣(ビースト)もおとなしくなるという算段。
まずはスープから。
ごくり。
麺、具、スープ。麺、スープ、具。具、スープ、麺。
ごちそうさまでした。さすがに満腹だわさ。
ってもう会計なわけで、名残惜しいけれども。
会計に先立って、ちゃんと財布の中身は確認した。
ラーメン大盛りで800円だ。
「700円ですね~」
などと店員がぬかすので、
「おんどりゃこちとら800万円用意できてんぞ」、とすごんだ。
もしくはすごまなかったかは忘れたけど、店員が言うには、
「普通盛りです」
え?
どうやら、私が空腹感によってほうほうの体だったからか「大盛り」というオーダーが霧散してしまったらしく、私が大盛りのつもりで食べていたのは普通盛りだったのだ。
なんだろう?この満腹感はなんだろう?
私は存在しない幻の大盛りを食べたのだった。
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ほんとうにラーメンを食べたのでしょうか?